Column

2021年11月30日
戻りたい、戻れない。


老眼に耳鳴り、薄毛、頻尿、
不眠、誤嚥、冷え性、物忘れ…。

髪は年々減っていくのに
小さな悩みは年々増えていく
微妙なお年頃。

20年ほど前までは
およそ想像できませんでしたからね。

想像もできなかったといえば、
2年近くにもおよぶ在宅勤務。

社会全体を見ると、
定着するかと思いきや、
ほとんど出勤していますね。

思いのほか、、、という感じです。

最近、取引先や協力会社と
やりとりをしていると
「えっ、まだ在宅?」
という心の声で、
在宅勤務を咎められている気が
することもしばしば。

在宅が続けばキツいといい、
出勤が続いてもキツいという。

人間、勝手なものです。

メリハリないのがいちばん
キツいわけです。
コロナが与えてくれた
せっかくの機会ですから、
上手に使いこなしたいものです。

かくいう私も、年末の仕事がらみで、
2週間連続で渋谷のオフィスに
出勤しました。

この2週間で、忘れかけていた
いくつかの懐かしい感覚も
戻ってきました。

例えば、朝の面倒なルーチンワーク。

シャワーを浴びて、髭を剃り、
歯を磨き、服を選び、靴を選び、
忘れ物がないかを確認して
カバンに必要なものを詰め込む…

在宅中の朝といえば、
パジャマのままポチッと
Macの電源と心のスイッチを
入れるだけでしたから。

幼稚園の時からと考えれば、
こんな面倒臭い朝の習慣を半世紀も
続けてきたわけです。

長いブランクがあったとしても
せいぜい夏休みの約40日間。
それが2年ですからね。

夜は夜で、少しでも翌朝の
面倒を省くために、
夜のうちに明日の着るものを
選んでおいたり、
仕事の段取りをイメージしたり。

2週間目の金曜日には、
やっと週末だ〜と
小さく喜んでみたり、
日曜の夕方にちょっと
ブルーになったり等々。

当たり前だった感覚が戻ることに
嬉しくもあり、少し寂しくもあり。

尾身会長の怨念かと思うような
オミクロン株なるものが出てきたりと
まだ予断を許さない状態です。

が、

私はといえば、
コロナ前や頭髪フサフサの頃に
戻りたい、戻れないと
グチグチとボヤきつつ、
将来への不安と焦りとストレスを
最小限に留めながら、
小さな変化を楽しんでいきたい
と思う次第です。


今月のオススメ映画コーナー。

今回のオススメは
「行き止まりの世界に生まれて」
というドキュメンタリー映画。

産業が衰退し、アメリカの繁栄から
完全に見放された
<錆びついた工業地帯>
イリノイ州ロックフォードに
生まれ暮らす3人の少年。
彼らの12年間の軌跡を追った
ドキュメンタリー。

冒頭は、品も学もない、少年たちが
アメリカの若者文化の象徴とも言える
スケートボードを破天荒に乗り回す
シーンが続き、
「これはやめとこうかな」と
思ったのが正直なところ。

そこを堪えて全編観たわけですが、
何とも深みがあり、
胸の痛くなるシーンの連続に、
かなり引き込まれました。

印象に残ったセリフとしては、

「人生が苦しいのは自分が最低だからだなんて認めたくない」

「自分で選んできた道だから逃げ道はない」

「白人の友達が出来たとしても黒人であることを忘れてはいけない」

深いよね〜

どちらかと言えば暗い映画ですが、
彼らに寄り添ってみたり、
その軌跡を自分や知人に
照らし合わせてみたり、
そして、彼らに比べれば、
自分なんて平和でお気楽なもんだと
元気になれるのであります。

映画にしても音楽にしても
ちょっとメンタル凹んでるなぁ
という時ほど、元気を与える感を
推してくる作品より、
暗くて退廃的で絶望感の要素が
ふんだんにある作品の方が、
逆に元気をもらえたりするのは
私だけですかね。

ではでは。